この記事では、着物、和装に興味がある、あるいは着てみたいけどよく分からないという男性に向けて、着物・和装の入門編として、カジュアルに着物を着てみましょうという内容で参考になれば幸いです。
1. 男性着物ってどんなイメージ?
「着物って女性が着るもの」というイメージを持っている方も多いかもしれません。でも実は、現代でもおしゃれとして着物を楽しむ男性は少しずつ増えています。特に最近は”和モダン”なスタイルとして注目され、街歩きやカフェでも、着物をサラッと着こなす男性を見かけますよね。
そう、現代ではフォーマルな場より、カジュアルな「おしゃれ着」として楽しむ方が圧倒的に多くなりました。
しかし「着物に興味があるし着てみたいな」と思っても、いざ買いに行こうとすると、「どこで買えばいいの?」と迷いませんか?
私も最初はまったく同じでした。「呉服屋に行けばいいんだろうけど…」と考えつつ、呉服屋って普通の洋服ショップみたいに気軽に入れる雰囲気じゃないんですよね。無知の自分がいきなり行っても大丈夫か?とかなり身構えてしまうというか。
そもそも初心者にとっては、「何をそろえればいいのか?」という点も大きな疑問。
そこでこの記事では、男性が着物デビューするために最低限必要なアイテムと、実際にどこで購入すればいいのかを分かりやすくご紹介します。
2. 男性着物に必要な基本アイテム
まずは、男性が着物を着るために必要な「カジュアル基本セット」から見ていきましょう。
(1)着物
主役となる衣服です。初心者は以下のような着物がおすすめです。
- ポリエステルの着物:しわになりにくく、雨の日でも安心。安価。家で洗濯できるのでとっても扱いが楽です。
- 木綿の着物:価格が手頃で、普段着向き。吸水性や通気性もよく、汗をかいても肌にまとわりつきにくいのが特徴。家で洗えるので手入れしやすいのも〇。
- ウールの着物:暖かく、秋冬に最適。洗濯できるが、洗濯機は使わない方が無難のため、手入れ難易度がやや高い。
- 麻着物:価格は少し高めですが、涼しく春〜初秋に快適。自宅で洗えますが、洗い方には注意が必要です。
絹の着物はハードル高め
高級な着物というのはほとんどが正絹(しょうけん=シルク)の着物です。そして最初から正絹を選ぶ必要はありません。むしろ高価で管理や扱いが難しいため、デビュー時は「洗える着物」がベストです。もし、はじめて行った呉服屋でいきなり正絹の着物をごり押しで進められたら、よほど気に入ったものでなければ断固拒否しましょう。正絹着物は少なくとも20万前後はします。正絹の素材感はとても高級感あるもので素晴らしいのですが、これから気軽に着物着てみたいなというにはハードルが高いでしょう。
(2)襦袢(じゅばん)
着物の下に着るインナーです。直接肌に着物を着ると汗や皮脂で傷みやすいため着た方がよいです。襦袢にも次のような種類があります。また、襦袢も素材の違いがあります。
- 長襦袢(ながじゅばん):着物の丈と同じ長さ。正式感が出る。きちんと感を出したい場合は長襦袢もおすすめです。ただ、長襦袢のデメリットは基本的に反物から仕立ててもらう必要があるという点で、反物価格に加えて仕立て代も乗っかってきますので、出費負担は大きくなります。
- 半襦袢(はんじゅばん):上下セパレート式で、洗いやすく普段着に最適。初心者には「半襦袢+ステテコ」スタイルが着るのも楽でお財布にも優しくおすすめです
- 襟無シャツ+ステテコ:着物の下に襟無しのシャツを合わせるのも今っぽくておすすめ。下はステテコでOK。
襦袢の素材は綿、麻、ポリエステルなどあります。正絹もありますが、高価で扱いが難しいので初心者にはオススメしません。
いずれの素材も麻や綿麻の素材を選ぶと快適です。麻は汗の吸水性・発散性がよく、通気性も高いためです。麻特有のチクチク感が気になる方は綿や綿麻混紡もおすすめです。ポリエステルは低価格ですが汗のべたつきが気になるのでその辺がクリアなら選択肢としてありです。
(3)帯(おび)
男性の着物姿を引き締めるポイント。帯の種類は大きく2つあります。
- 角帯(かくおび): 細長く固めの帯で、男性着物の定番です。きりっとしたシャープな印象に仕上がります。
- 兵児帯(へこおび): 柔らかく幅の広い帯で、ふんわりとした見た目になります。結び方も簡単なので、初心者でも気軽に挑戦できます。
- ワンタッチ帯: あらかじめ結び目が作られており、巻いてマジックテープなどで留めるだけの便利な帯です。とにかく簡単に着たい方におすすめです。
素材の違いと選び方
素材は主にポリエステル、綿、麻、正絹(しょうけん)があります。それぞれ締めやすさが異なるため、着物デビューには特に以下の素材をおすすめします。
- 綿の帯: 価格と締めやすさのバランスが一番良い素材です。適度な摩擦があり、しっかり締まって緩みにくいので、初心者の最初の一本としておすすめ。
- 正絹の帯: 締めやすく、素材の高級感も抜群。ただし高価(1〜3万円以上が目安)。 ステップアップ用におすすめ。
- ポリエステルの帯: 価格が安く、デザインも豊富で選びやすい。ただし滑りやすく、着崩れしやすいのが弱点。初心者にはやや扱いづらい。
- 麻の帯:通気性がよく、夏向きの帯です。季節感が強いため、通年使うにはちょっと不向き。
帯結びは、一度覚えてしまえばとても簡単です。見た目の好みや、素材の締めやすさで選んでみましょう。
(4)足袋(たび)
足袋は、和装専用の靴下です。着物を着るなら、やはり足元まで和装で揃えたいもの。フォーマルな場では白が基本ですが、普段着として楽しむなら、黒や紺など、さまざまな色や柄があります。初心者は「ストレッチ足袋」を選べば履きやすくて快適です。こはぜ(留め金具)がないタイプもあって履きやすいタイプもあります。といっても、カジュアル着物の場合はスニーカーやブーツを合わせてみるのも良いでしょう。
- 初心者におすすめ:「ストレッチ足袋」:伸縮性があり履きやすい。 「こはぜなしタイプ」:スリッポン感覚で履けるのでとっても楽。
- 価格帯:1,000〜3,000円程度で入手可能。”和洋ミックス”コーデも流行っているので、そういったコーデを楽しみたいなら後回しでもOK。
(5)履物(草履・雪駄・下駄)
足元を彩る履物も、着物スタイルを完成させる重要なアイテムです。主に以下の3種類があります。
- 草履(ぞうり): 最も一般的な履物で、フォーマルからカジュアルまで幅広く使われます。最近はクッション性のある素材や、鼻緒が柔らかく作られているものもあり、長時間歩いても疲れにくいのが魅力です。
- 雪駄(せった): 草履よりカジュアルな印象で、粋な着こなしによく似合います。日常的なお出かけから、少し改まった場所まで、幅広く活躍してくれます。
- 下駄(げた): 浴衣やカジュアルな普段着にぴったり。カランコロンという音が心地よく、夏のお出かけに最適です。慣れないと足が痛くなることもあるので、最初は短時間のお出かけから試してみましょう。
街歩きや日常使いなら、歩きやすい草履やカジュアル雪駄がおすすめ。 最近はスニーカーやブーツと合わせる“和洋ミックス”コーデも人気なので、必ずしも和装履物にこだわらなくても大丈夫です。
(6)腰ひも
着物や襦袢を着る際に体に巻きつけて固定するための道具で、意外と重要です。初心者は
襦袢用と着物用に「腰ひも2本」があれば十分。
着物は帯を締めるから不要とも言えますが、初心者の内は腰ひもを締めたうえに帯を締めるのが安心です。
おすすめはゴム付きの紐、あるいはフックがついているものです。フック付きのものは結ぶ手間も省けるので初心者にもおすすめです。
3. 初心者がそろえる順番
「全部買うのは大変そう…」という方のために、揃える順番を整理してみましょう。
- 着物(ポリエステルや木綿)
- 長襦袢または半襦袢+ステテコ
- 角帯または兵児帯
- 腰ひも(インナーがシャツなら1本でもOK)
- 足袋+草履(または雪駄)あるいはスニーカーなどでもOK
これで最低限「外に出られる着物姿」になります。余裕が出てきたら羽織や小物を追加しましょう。
4. どこで買う?初心者向けの入手先
着物を買う方法はいくつかあります。代表的なのは 呉服店・ネット通販・リサイクル着物店 の3つ。
「どれが正解なの?」と迷ってしまうかもしれませんが、実はそれぞれにメリットとデメリットがあります。
ここでは、初心者の方でも安心して選べるように、それぞれの特徴を分かりやすく紹介していきます。
ネット通販(楽天・Amazonなど)
セット販売が多く、安価でそろえやすい。着物自体はアマゾンなどで安く買うこともできます。こういった着物は仕立てあがったもの(プレタポルタ)で、普通の洋服のようにサイズが決まっているものですから、購入すればすぐに着れるメリットがあります。まずは気軽に着てみようという場合は購入しやすく、費用も抑えられるのでおすすめ。ただし、既製品という特性上、自分の体形にピッタリというのは難しい側面があります。
- 価格帯
- 着物セットは5,000〜20,000円程度。単品でも比較的安価。
- メリット
- 価格が安い
- セット商品が多く、必要なものを一度に揃えられる
- 自宅にいながら気軽に注文できる
- デメリット
- サイズ感が分かりにくい(特に裄丈や身丈)
- 質感や色味が写真と違う場合がある
- 返品・交換に手間がかかる
リサイクル着物店
リサイクル着物店は、中古の着物や帯を扱うお店です。「中古」と聞くと抵抗があるかもしれませんが、実際には一度しか着られていないものや、状態の良いものが出回っています。
中古でも状態が良いものが多く、1,000円〜1万円程度から購入できるものもあり、新品に比べて圧倒的に安価で掘り出し物もあり。ただし、男性着物は女性着物に比べて圧倒的に数が少ないです。もし良いものが見つかったとしても、サイズが合わないこともしばしば。ただ、少ないながらも男性着物を多く扱うお店もあります。
- 価格帯
- 1,000円〜1万円程度から購入できるものもあり、新品に比べて圧倒的に安価。 掘り出し物やブランド物でも、数千円〜数万円で見つかることがあります。
- メリット
- とにかく安く始められる
- 気軽に色や柄に挑戦できる
- 店舗によっては試着も可能
- デメリット
- サイズが合わないことがある(特に身長や裄丈)
- 古いものだとシミやにおいが残っている場合がある
- 店員によっては知識がバラバラ
呉服店
呉服店は着物の専門店で、スタッフに相談しながら選べる安心感があります。 サイズの仕立て直しやアフターサービスも受けられるのがメリットです。
初心者には敷居が高く感じられるかもしれませんが、きちんとした一着を長く使いたい場合には有力な選択肢です。扱っている商品によって価格の幅は大きく異なるので、ある程度下調べしてからの方がよいです。
品質やサイズ相談で安心ですが、価格や営業スタイルに注意も必要です。お店やスタッフと信頼関係が築ければ色々相談できてとっても心強い。
そのあたりは別記事『初心者が呉服屋で失敗しないためのポイント』で詳しくまとめましたので、気になる方はぜひご覧ください。」
- 価格帯
- 扱っている商品によってまちまち。カジュアル着物が多いお店は比較的低価格ですが、正絹着物を主に扱っている場合は高価。新品の正絹着物は仕立て込みで20万〜が目安。高級品は数十万円以上。
- メリット
- 専門スタッフに相談できる安心感
- 体型に合わせた仕立てが可能
- 生地の質感や色柄を実際に確認できる
- 購入後のアフターサービス(クリーニングやお直し)が頼みやすい
- デメリット
- 価格が高い(初心者にはハードルが高め)
- 店舗によっては強めの営業を受けることもある(初心者はこれが怖い)
- 「入りづらい」という心理的ハードルがある
初心者はまず「ネット通販の着物セット」から始め、慣れてきたらリサイクルや専門店にステップアップするのも良いと思いますが、きっちりマイサイズの着物が欲しい方は呉服店に相談に行ってみるとよいでしょう。
5. 着物を着る場面のアイデア
夏祭りや花火大会に浴衣を着る方が多いですが、近年の気温上昇もあって、着物はむしろそれ以外の季節の方が着やすいので、夏以外にも積極的に楽しみましょう。
- 週末の街歩きやカフェ巡り
- カジュアル着物に羽織を合わせれば、普段の街歩きも新鮮に。着物×コーヒーの写真はSNS映えも抜群です。
- 旅行や観光(京都や鎌倉などで特に映える)
- 歴史ある街並みに着物はよく映えます。特に京都や鎌倉では着物を着て街歩きをしている方も多いので、初心者にありがちな「視線が気になる」という懸念も抑えられます。慣れたらどうということはないんですが。。
- ちょっとした会食や飲み会
- 和食店や居酒屋で着物姿だと、場がグッと華やかになります。特に羽織を合わせれば「きちんと感」と「カジュアル感」のバランスが絶妙。
- 夏祭り・花火大会
- 浴衣だけでなく、カジュアルな着物も選択肢に。下駄や兵児帯を合わせれば一気に夏の雰囲気に。
「特別なイベントでなくても、着物は日常のちょっとした場面に取り入れるだけで新鮮な気持ちになります。最初は“週末の街歩き”や“カフェ巡り”など、気軽なシーンから始めてみるのがおすすめです。」
6. まとめ
男性が着物デビューするために必要なものは、意外とシンプルです。
- 着物(木綿・ポリエステルでOK)
- 半襦袢+ステテコ(襟無シャツ+ステテコも〇)
- 帯(兵児帯からスタート)
- 腰ひも
- 足袋と草履(スニーカーなどでもOK)
この基本セットがあれば、誰でも着物デビューできます。さらに羽織を加えれば、きちんと感もあり、よりスタイリッシュで男らしい印象に。
「着物は難しい」と感じる方も多いですが、最初の一歩を踏み出してみれば意外と気軽なものです。週末の街歩きやカフェ、ちょっとした旅行に着物を取り入れてみてください。
きっと、これまでとは違う新しい自分に出会えるはずです。
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