最近、男性の着物人口が少しずつ増えています。かつては冠婚葬祭でしか着る機会がなかった着物ですが、日常的に着こなす男性が若い世代を中心に増えてきました。
しかしいざ着てみると、思いのほか手こずるのが衿元の乱れです。
歩いているうちに気づけば衿がはだけている、せっかくの着物姿がなんとなくだらしなく見えてしまう。そんな経験をした方も多いはずです。
実はこの問題、女性の着物と比べて男性の着物に起きやすい構造的な理由があります。
なぜ男着物は襟が乱れやすいのか?
女性の着物では帯を胸の下あたり、高い位置で締めます。これが自然と衿元を押さえるアンカーの役割を果たし、着崩れを防いでくれます。
一方、男性の着物では帯を腰骨のあたり、かなり低い位置で締めるのが基本です。そのため衿元を固定する力が働きにくく、少し動いたり座ったりするだけで衿が開いてしまいやすいのです。「着物は着ているとだんだん乱れてくるもの」と半ば諦めている男性も少なくありませんが、ちょっとした小道具を使うだけでこの悩みはぐっと解消されます。
「襟止め」とは?
襟止め(えりどめ)とは、着物の下に着る長襦袢の半衿に取り付けて、衿の位置を固定するための小物です。半衿を挟んで留めることで衿がずれるのを防いでくれます。
着物の外からは見えない小さなアイテムですが、その効果は絶大です。
襟止めを使うとどう変わるか?
衿元のラインがぴしっと整い、着姿全体に清潔感とメリハリが生まれます。歩いても、座っても、衿がだらりと開いてくることがなくなるため、「なんとなくだらしない」という印象を防ぐことができます。
着姿が安定することで、着ている本人も無意識に衿元を気にしなくて済むようになります。所作や立ち居振る舞いに余裕が生まれ、着物ライフがぐっと快適になるでしょう。
襟止めの選び方
襟止めを選ぶ際に意外と見落としがちなのが、クリップの口の幅です。
半衿の生地の厚みによって、合うクリップのサイズが変わります。ウールや木綿など厚手の半衿にはやや口の広いタイプが向いており、絹や化繊など薄手の生地にはコンパクトなもので十分です。幅が狭すぎると半衿をしっかり挟めず、逆に広すぎると外れやすくなるため、手持ちの半衿の素材を確認してから選ぶのがおすすめです。
私が愛用しているのは加藤商店さんのこちらのタイプ。2個セットなので、予備としても安心です。
加藤商店 衿止め 2個セット
ミシン縫いの半衿でも諦めないで
既製品の長襦袢で、半衿がミシンでびっちりと縫い付けてあることがほとんどです。この場合、クリップが挟みにくく襟止めが使えないことがあります。
そんなときは、自分で半衿を手縫いで付け直すのがおすすめです。手縫いであれば生地に適度な遊びができ、クリップも挟みやすくなります。さらに、半衿を自分で付け替える習慣がつくと、汚れたときの交換も気軽にできるようになるという副次的なメリットもあります。半衿の付け方については、こちらの記事も参考にしてみてください。(※内部リンク)
まとめ
男着物の衿元の乱れは、帯の位置という構造的な理由から起きやすいものです。しかし襟止めというシンプルな小物を使うだけで、着姿はぐっと整います。選ぶ際はクリップの口の幅と半衿の素材を合わせること、ミシン縫いの場合は手縫いで付け直すことを覚えておけば、ほとんどの場合に対応できます。
目立たない小物ですが、着物姿の完成度を大きく左右する縁の下の力持ち。ぜひ一度試してみてください。